切ないなあ・・・
時代遅れのマジシャンは
1959年パリでマジシャンとして生活している初老男性のタチシェフ。劇場舞台で得意の手品を披露しますが、それは”帽子からウサギを出す”といった古典的なものでした。観客からの反応も乏しくなっていました。そしてある日、ウサギが飛び出して他者の演舞を荒らしてしまい、とうとうクビになってしまいました。
そして巡業を行い各地を周り、スコットランドへ向かう途中の小さな島の酒場で手品を披露します。島民たちは驚き拍手喝采。タチシェフも満足した仕事でした。しかしこの酒場で働いている少女アリスは、タチシェフを魔法使いと思い込んでしまったのです。そしてアリスは巡業についてくることを決意し、タチシェフの生活は大きく変わってしまうのでした。
純粋さと下心
初老の男性に付き纏う少女という設定ですが、アリスは純粋に”魔法使い”と思い込んでいました。タチシェフも純粋にアリスの喜ぶ顔が見たくて服や靴を送ります。普通に買って渡すのですが、アリスにとっては魔法で取り出したアイテムに見えているのでした。
純粋で真っすぐなアリスは、性格的にも幼い様子で恋心があるかはわかりません。しかし慕われたタチシェフとしては小さくても下心はあったのではないでしょうか。そう考えて観てみると、少女に貢ぐおっさんに見えて心が苦しい。心配するなタチシェフ!気持ちはわかるから!
観る人・タイミングで変わる、まさにイリュージョン
女性視点ではシンデレラストーリーが待っています。男性視点では哀愁が残ります。特に男性は観る年齢で考え方と印象が大きく変わってしまう作品です。失ったり手放したり、解放する事で自分も自由になれる、というテーマに沿って描かれた世界観はなんだか儚さを感じさせます。
ほぼ無声映画で説明や注釈もありません。ドンと作ったので、細かい部分は考察楽しんで!と言わんばかりの作り方。観ながら自分の今までに起こった出来事を思い返し、”何か”をボンヤリ考え込んでしまいました。タチシェフも時間が経てば”人生こんなもんさ”と笑うのでしょう。10年経ったらもう一度見ようと思える作品でした(覚えてないよな)。
コメント も、文句以外で・・・