活きる場所って必要ですよ
2人の少女と親切な老婆
東日本大震災後、岩手の神社で父親との生活に耐えれなくなって家出したユイは、両親が交通事故、更に住んでいた親戚宅は震災に巻き込まれ、そのショックから声を出せなくなった少女ひよりと出会います。宛先のない2人ですが、避難所で出会ったキワという老婆が「私の孫なんだよ」と偽り自宅である岬の古屋に引き取ります。
キワはとても親切で、2人を大事にもてなします。しかしユイは何故こんなに親切にするのか、と怪しく感じています。キワに真っすぐに疑問をぶつけてみると、キワは迷った人間をもてなし幸福にする「マヨイガ」の話を聞かせます。何故そんな話をしたのかわからないユイでしたが、次第にこの古屋に不思議な力が宿っている事を思い知るのでした。
自然と共に生きていた遠野物語(ちょいネタバレ)
岩手県ということで出演?する妖怪は「遠野物語」に関連していました。これは明治時代の文明開化が歌われる時代に、国外ではなく国内の更に山村に目を向けた著者:柳田国男が実際に聞いた話をそのまま記したという貴重な作品。不思議・悲しい・怖いといった妖怪もので、日常の中の不思議は妖怪の存在で説明されています。
作品で出て来る妖怪は様々ですが、今回主役の「マヨイガ」は優しい部類。訪れたものはその家から物品を持ち出してよいと言われています。絢爛豪華な物が多く、人を惑わすように見えますが、全然そんな事ない「人に優しい妖怪」です。余談ですが「うしおととら」という漫画(アニメ)でも主人公が訪れ、「おにぎり」を持って行きました。
2人の少女は居場所を見つけれたのか
震災後は不安な方が多くそこに付け込んだ闇が存在していました。この地で生きたいと願いながらも、押しつぶされていく心。悲しみ多いこの地に安住は難しいとさえ感じています。そんな中でも「ここで生きたい」という人の想いが根を張っていきます。今作のマヨイガは富ではなく、現代にもっと必要とされる何かを少女に渡していました。
人も妖怪も土地に根付いている。震災地の方々へは勿論ですが、窮屈に感じて生きている現代人に対してもエールが送られていました。「どうして私だけが」という出来事は、実は万人にあるもの。でも認められないんです。悲しいシーンでは自暴自棄になった自分を思い出してしまいましたが、「だから今が不幸」というわけではない、そんな事を気づかせてくれたふんわり温かい妖怪ファンタジーなアニメでした。妖怪のことを「ふしぎっと」と呼んでいるのはとても好み。
⇑ 小説「あずかりやさん」も八百万モノで、物に魂があります
コメント も、文句以外で・・・