ミッツァルに含まれたものとは・・・
ツオル帝国が恐れる病
その昔ツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国へ侵攻します。しかしアカファの風土病”黒狼熱(ミッツァル)”によって、ツオル人は大打撃を受け撤退しました。そしてこの2国は併合関係となり穏やかで良好な友好関係を築いていました。時は流れツオルは、黒狼病に対する”恐怖”を拭う目的のため”玉眼祭”を催す事を決定。ツオルの王はアカファの土地へ訪れます。しかしこの時から再び黒狼病の陰が動いていました。
この頃カファ岩塩鉱で事件が起こります。突然山犬が襲撃し、鉱山で働く者達に”黒狼病”をまき散らします。しかし捉えられていた奴隷の一人ヴァンは、鉱山で一人になっていた少女ユナを連れて逃げる事に成功します。山犬に噛まれながらも鉱山から脱したヴァンはその体に”抗体”を持ちます。そしてこの抗体を巡ってヴァンに刺客が送り込まれる事になるのでした。
黒狼病(ミッツァル)という風土病
ツオルの人間の脅威となる黒狼病はアカファの人間は罹りません。しかしそれは”アカファの土地で過ごした者”という意味で、土地を離れた者は患ってしまいます。もちろんそこには理由があり、本作で明らかにはなるのですが、この病に込められたのは”風習”への想いでした。
日本に限らずですが、土地土地によって”意味不明な風習”が存在するものです。それは食であったり習慣であったりと様々ですが、それは古来に”意味がある”とされていた事です。そんな”生まれながらの場所”をもう一度見つめ、そして考え直す必要性を伝えていました。郷に入っては郷に従えではありませんが、他所の土地を荒らしまわって良い理由はありません。土地で暮らす者を土地が決める、それも自然の摂理なんだなあ・・・なんて考えさせられます。
犬や人間ではなく”鹿”の王様
”王”という言葉にはそれ自体に強さを感じます。特に動物の王となると”物理的な強さ”を受けてしまいます。しかし”鹿の王”というのは、鹿の王さまという意味ではなく”鹿の取る行動”のことを指していました。作中で「雌鹿が狼に襲われた際、年老いた雄鹿が狼を挑発して踊り惹きつけた。」「鹿の王の話ですね。」という会話があります。種の存続を一番に考えた行動が出来るもの、それを”鹿の王”と呼ぶという物語。これが本作のテーマとなっていました。
てな感じの、そもそも膨大なストーリーである小説が原作。原本ありきで観ると2時間以内とコンパクトにまとめすぎてしまったという、物足りなさすら感じてしまうオチに思われます。しかし”映画単作”として観れば、深いメッセージをどこまで込めれるのか!?という挑戦的な作品になっていました。”疫病”が登場していますがあまり本作テーマと直結はしていないので、美麗アニメーションを純粋に楽しむのが良い観方です。
コメント も、文句以外で・・・