これが実話ベースとは信じたくない・・・
北朝鮮の日常
平壌に住むパク一家。長男のヨハンは学校で友達と笑い妹ミヒの面倒を見、「勉強しろ、家族を守れるようになれ」と厳しい父と常に優しい母に囲まれたごく普通の家族です。しかしある日を堺に父親が失踪し、更に突然憲兵が家に押し入り3人を捕えます。わけも分からず3人が連れて行かれた場所は「収容所」でした。
3人には狭い部屋が与えられ、収容所内で毎日重労働を強いられます。金持ちの子供達からは馬鹿にされ、見せしめの処刑を見せつけられたりと、日々心身共にすり減っていきます。ある日ヨハンは空腹に耐えれなくなり夜中に食料を探しに外へ出ました。そこで同じく食料を探していた吃音の孤児と出会います。意気投合した2人はそれから常に1組で活動していきます。そして9年が経ったある日、ヨハンに大きな転機が訪れるのでした。
残酷な世界でも”心”が生まれていた
暴力・重労働・密告・強姦と暗い話しか見えてこない北朝鮮の闇テーマ。生きるだけの毎日にヨハンは「飯食ってクソして寝るだけ。クソ製造機か!?」と苛立ちを見せます。この台詞は僕達も日々の暮らしで感じる事がありますが、”重み”が違いました。命の価値がデフレているこの”収容所”という世界ではクソも命も同じなのか!?とすら感じてしまいました。しかしこの吐き気がするこの世界でも、クソ以外に生まれるモノがありました。
ヨハンの母と妹は常に周囲の人間に献身的でした。飢えていれば与え、困っていれば助ける、そんな2人の姿にヨハンは嫌気がさします。”明日の自分すらわからないのに他人を助けるなよ”という思いが見えました。しかしこの”善意”こそが人の中に生まれる最上の武器になっていきます。正しいモノを探すのではなく、正しいモノになるべき、という強い意思・信念が普及していく姿がこの作品の”美しさ”でした。
個人の無力さが詰まっていた
北朝鮮の真実が描かれたこの作品では、国家という巨大組織に対して個人の無力さを思い知らされます。何気ない会話すら”死”を招いてしまうこの世界では誰も助けれないし、自分すら守れません。こんな許されない行為が今現在で続いているとか。エンドロールでは証言をされた方々の名前が出るのですが、これは一部で名前を公表できない方も多く居たはずです。そんな背景を想うと心苦しくも、心に火が付くような感覚が湧き上がりました。
実話ベースという事で尚更重くなりましたが、問題提起・警鐘映画として成功作。劣悪な環境に順応しつつも人の心は失われない、そんなメッセージが静かに熱く込められており、”これではいけない!”と観る者の心に響かせてきます。ショッキングな出来事や映像が苦手な方は避けた方が良い内容で、”真実を知りたい”という思いが強い方にお勧め。知った方が良いと思う反面、知りたくない・目を背けたい現実である事は間違いないので・・・
コメント も、文句以外で・・・