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”信じたい”が真実を曇らせる「地の塩」

ミステリ
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3.6 圧巻の大泉洋

”神の手”と呼ばれる男

山梨県塩名町で遺跡発掘作業をしていた神村賢作は、日本には存在しないと思われていた前期旧石器時代の遺物を発掘します。歴史の教科書にも掲載され”神の手”と呼ばれだした出来事が3年前。新たに西多摩の桑名遺跡で発掘作業をしている神村は遺跡にしては新しい人骨を発掘してしまいます。それは13年前の未解決事件に関わる女子高生の遺骨でした。

丁度この頃、前期旧石器時代の発掘に異を唱える国松教科書編集者である佐久間里奈に対して「神村の発見は捏造」と訴えます。真実かどうかの問題がある中、桑名遺跡で捏造の証拠を探っていた国松が殺害され浅く埋められていました。この事件から”神の手”への疑いが徐々に広がっていきます・・・。

本島にあった”捏造事件”

2000年11月に発覚した旧石器発見の捏造事件が元になっており、神村のモデルは藤村賢作です。実際に”神の手”と称されており、25年間に渡り調査発掘チームで大活躍をしています。考古学的な発見は観光地となるため、多くの地域から歓迎・賞賛されたことで魔が刺したのかな・・・。

しかし毎日新聞でスクープされた上高森遺跡を皮切りに過去全て藤村が関わった遺跡が再点検されます。そこで明らかになったのは、発見された遺物のほとんどが藤村自身が仕込んだものということでした。今まで発掘した遺跡の多くが認定を取り消された、という出来事が元ネタです。ちなみに遺体等はフィクションで、殺人事件云々はありません。

関係者全員が「そうだったらいいな」を信じてしまった

実際には気づいていた人も少なくなかったはずです。神村が探せば大発見が起こる・・・そんなはずはありません。政府も石器の展示や国の史跡に指定したりと後押しします。それは歴史的な意味の発見よりも話題性・商業性に偏った動きでした。「国が間違うはずがない」「専門学者が太鼓判」を鵜呑みにしてはいけない教訓になりました。

今回の見どころは渋い大泉洋の熱演でした。圧や迫力はないのですが、静かで紳士的な神村には一見すると陰がない人間に見えました。この辺りがうま~く役作りされていました。題名の「地の塩」とは「社会のため尽くす・模範となる人」という意味。果たして彼は社会のためにこの騒動を起こしたのだろうか・・・僕なら3遺跡ぐらいで引退しておきますね。

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