完全に見分けがつかないなら人間・・?
話が合わないアシスタントの正体
雑誌に天才科学者デビッドの研究についてを寄稿するため、ジョイは1週間に渡るインタビューを開始します。その初日、デビッドと軽い挨拶を交わした後アシスタントと思われるアダムとも会話します。しかしアダムとは微妙に話がかみ合わず、ジョイは「アスペルガー症候群なの?」とデビッドに訪ねます。するとデビッドは無表情なまま「彼がAIのアダムだよ。」と答えました。
2日目、デビッドとアダムはチェスをしています。アダムが徐々に強くなっていますが、デビッドの方が強い様子。更にデビッドは6手前に詰めれていたのに、わざと手を抜いて勝利を遅らせていました。アダムは自分に恥をかかせるためと結論付けています。ジョイは「人間には色々な思考があるの。」と手に触れました。アダムは触れられた事が少ないため混乱し、この時から”感情”を露わにし始めるのでした。
不気味の谷現象が理解できる作品
不思議なモノでロボットがある一定の度合いで人間の姿に近づくと、何故だか恐怖や嫌悪を感じてしまいます。”ロボット”には親愛感があり、”人間らしい”には嫌悪感があり、そして”人間そのもの”になると意見が分かれます。これをグラフ化した時に不気味と感じる状態(下方線)を”崖”に例え、不気味の谷現象(外部リンク)と呼びます。
本作ではAI知能を持つアンドロイドが人間すぎて、嫌悪の対象ではなく興味を惹かれる存在になっています。リアルな皮膚の質感と自然な動き、そして若干ズレながらも会話として成り立つのは元科学者のジョイにとって興味深いものでした。しかし科学者というのはどこまでも”研究の成果”に拘る性質なのです。
アンキャニー 不気味の谷(字幕版)
優先は研究
デビッドは人間に近づける為、不必要でも”食事”ができるようにしています。そこまで近づけたAIは、既に自分で考え自分で行動を始めていました。科学者として強く惹かれる精神的な現象が起こっていたのです。しかしこの”恋愛感情”に、AIが幸せになる結果は思い浮かびませんでした。
常に不穏で違和感を感じさせる会話劇。ほとんどが”研究施設”の中で進むため、閉塞空間ならではのゾクゾク感が楽しめる作品。振り返って観れば、チェスでの心理的描写はお見事。AIは新たな生物となるのか?そんなゾクッとする事が思い浮かびます。でもまあ、ここまでくれば”人間”ですな。
コメント も、文句以外で・・・