世の中は不条理で平和なんて脆いもの
ヤーマン戦車「フューリー号」
戦場に立ち止まってしまった戦車。砲弾が降り注ぐ中「早く直せ!!」と怒号が飛びます。そしてエンジンが直り再び戦車が動き始めました。死地を超えて帰還した戦車”フューリー号”ですが、副操縦士は戦死。将校に生き残り人数を聞かれたドンは「我々だけです。」と答えました。
副操縦士の代わりに配属されたノーマンが挨拶にきます。しかしドンは経験のない新人を宛てられた事に苛立っていました。他のメンバーも初めて戦車を見るノーマンに厳しく、現実を知らしめるため血肉の残る戦車の内部洗浄を命じます。そして新たな作戦を受け、街の占拠へ動き始めるとドンはノーマンに「ためらわずに撃て。」と指示。そして”戦争”がはじまるのでした。
何故、戦車が作られたのか
戦車の出現は1916年頃イギリスで、海軍大臣チャーチルの考案とされます。第一次世界大戦中はどこの戦争でも、自陣・敵陣共に塹壕や鉄条網で覆われ更に機関銃などの火器配置により身動きが取れない状態に陥っていました。この膠着状態を打開するために作り出されたのがTANK(戦車)になります。
まさに敵陣突破・敵軍排除を目的とした兵器であり、戦争といえば戦車という破壊のための兵器です。登場から各国研究に時間を割き、世界中で躍動した戦車には1台1台に人間の物語が詰まっています。本作フューリーでは戦車に護られながら戦場に身を置く、そんな兵士達の現実と無力さを描き切っていました。
人が死ぬから悲惨?それだけではないから悲惨
両部隊共に砲撃し合いますが、個人で見れば悪党ではありません。登場人物に善人も悪人もなく、戦争下における人間の行動・思考があるだけでした。誰しもが住処を追われ、生活を追われ、愛を奪われていきます。何もかもを失っていく、全てが脆く崩れ去る、それが戦争の全てだと語っている本作でした。
展開に涙を浮かべて歯をくいしばって観ました。”怖い・つらい・逃げたい”という本質が良く出ています。戦車の戦場の戦士達の、それは戦争を細部にまで再現したリアリティに寄るもので、これほど戦争を身近に感じる映画も少ないと感じます。”フューリー”が描くのは戦車のカッコよさ、ではなく戦争行為の愚かさでした。
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