これはあくまで”小説”スタイル
気になる続きとフィクション性
元小説家の津田はとある理由で作家業を辞め、”女優クラブ”というデリヘルの運転手をしています。知り合いの古本屋店主に3万円を返すことさえできない津田は、毎晩喫茶店で時間を潰します。そして同じ時間から朝まで小説を読み過ごす秀吉に声を掛けます。複雑な家庭事情である秀吉は津田の読んでいるピーターパンが気になり、借りることを約束しました。しかし彼がその喫茶店に現れる事はなかったのです。
・・・という冒頭から始まる小説に、編集者の鳥飼は引き込まれます。しかしこの元直木賞作家の津田という男、実は以前”実際の出来事”を小説にしたために起訴されています。鳥飼が「津田さんの話じゃないですよね?」と念を押すと「小説の話だ。」と津田が答え、さらに「続きが読みたければ20万だ。」と告げます。果たして小説なのか現実なのか、それは続きを読まなければ判断ができない事でした。
現実と小説(仮想)が入り混じる
”小説”のストーリーがメインパートとなっており、”現実”では津田によってストーリーの補完がされていきます。津田は”実際の人物や出来事を元にした”と話していますが、それは既に解決した話かどうかもわかりません。虚実入り混じった展開にドキドキ感がありました。
小説の鍵となるのが秀吉で、中々重い過去と現在を背負っています。津田はそんな臭いを感じとったのか近寄ります。このタイミングがずば抜けて良く、この後秀吉が姿を消します。そしてたまたまの閏年という、1年366日という”余分な1日”がある年。この辺りも何か数奇な運命を感じさせていました。
鳩が舞い降りたのも現実離れしていた
題名の鳩は”何かの例え”なのですが、この鳩が津田の元に来たのも想像すらしていなかった出来事。たまたま秀吉が姿を消す直前に声をかけ、何故だかこの時に古本屋の主人に異変が起こります。もちろん”小説の話”ですので数奇な出来事は当然です。しかしこの作品、登場人物も実在しておりリアル過ぎました。
本作はジワジワと来るミステリー・サスペンス作品でした。派手さはなく、ちょっと”いつもと違った日常”のようなテンポで展開されます。奇跡と偶然の繰り返しで人生が出来ているというメッセージを感じる作品でした。そして本作主人公津田役は藤原竜也。今回も例にもれず”割とクズ”として大活躍してくれました。惜しいのは”叫ばなかった”ことだけですね・・・
コメント も、文句以外で・・・