支えたのは夫婦愛
元金メダリスト
1956年のメルボルン・オリンピックで西ドイツ代表として金メダルを獲得したパウル・アヴァホフ。妻のマーゴと静かな日々を過ごしているのですが、マーゴは数年前に乳がんを患っており娘ビルギットは心配しています。パウルはビルギットから「お母さん(マーゴ)の為に。」と促され老人ホームに入る事を承諾しました。
しかしホームでは、毎日歌を歌ったり手芸をしたり。療法士のミュラーは「老人はみんな平穏を望んでいるもの。」と話します。そんな考え方に納得できないパウルはベルリン・オリンピックマラソンに出場するためにトレーニングを開始します。その姿を見たマーゴも昔を思い出しサポートを始めるのでした。
老人ホームの”在り方”を考える
療法士の保守的な考え方はごく普通の思考です。介護現場で働く僕から見ても”そんな感じ”という話で、実際にもそういう入居者は居ます。そして何でも”老人性なんたら”という理屈で閉じ込めようとする傾向は”無きにしも非ず”といった感じ。元気なパウルには耐えがたい生活と扱いだったのです。
日本の老人ホームと比べるとゆったりして明るい雰囲気のドイツ。庭も広く申し分ない環境ですが、やはり規則にしばられ職員配置といった部分は日本と同様です。個人と自由性ではなく、事故等のリスクが優先されるのはどうしようもないのでしょうね。命か自由か、自分で選べる時代が来るといいなあ・・・
人生もマラソンも同じこと
パウルは誰にも左右されずに自分のペースで走りたいのです。そこに入れるとしたらコーチであり妻であるマーゴだけでした。そんなパウルは走る事で自分の生きざまを魅せます。周囲も影響を受け少しずつ活発さを取り戻すシーンは、昔夢と希望を与えた金メダリストの姿そのままでした。
人生の終着駅と呼称される老人ホーム、これだけ元気なおじいちゃんにはまだ早い場所でした。知らぬ間に周囲に夢を与えるパウルは休憩をしても立ち止まることはありません。人生42.195kmの38kmは走り終えたパウル。スタート序盤の不安と楽しさ、中盤の苦しさを乗り越え、そして後半ゴールに向かって最後のひと踏ん張りをしている、そんなパウルのゴールは何を伝え残したのか。思惑考えさせられるハートフル・ヒューマンな作品でした。
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