自分を信じすぎた男・・・
過激なホロコースト否定論者
1994年のアトランタにある大学で、ユダヤ人ホローコースト研究学者のリップシュタットは学生達に講義を行っていました。その中で学生達から「否定論者と対話しないのは何故ですか?」との質問に答えていると、アーヴィングと名乗る有名な否定論者が姿を現わします。そして彼女に次々と質問を浴びせ倒しました。更にアーヴィングはリップシュタットを訴えます。
以前リップシュタットが出版した著作を読んだアーヴィングは、「言われのない批判を受け名誉を傷つけられた。」と英国裁判所で訴訟を起こします。相手にしたくないと思いながらも彼女は”ホロコースト”について誤った認識が広まる事を怪訝し優秀な弁護団を構えます。そしてアーヴィングの嘘を明らかにするため、アウシュビッツでの惨劇を再調査・再確認していくのでした。
歴史家というのは”自称”的なもの
この出来事は1996年の実話で、リップシュタットとペンギンブックスに対して、アーヴィングが起こした訴訟が基になっています。実名出しということもあって、限りなく再現されている作品です。リップシュタット弁護団は名誉棄損ではなく真実、と立証するためアーヴィングの”粗さがし”を行っていきます。
そしてアーヴィングの粗ですが、探さなくても見つかっていくレベルでした。証拠偽造・統計偽造・情報の自己解釈と、自信の主張に都合よく改ざんし著作物を出しています。そのため最初に書いた物と最新の物で主張が異なっていました。そのため弁護団から”歴史家として信用できる人物ではない”と主張されています。
人は見たいモノを見る
作中でもよくわかるのが、アーヴィングは自分の都合の良い資料を意図的に使用していることです。彼は歴史の真実を追求しているのではなく、自分の考える・信じる歴史を主張していました。ホロコーストに対する意見がコロコロ変わることを「その時の知識に基づいて話したからだ。調べて真実が明らかになれば変化するのは当然。」としています。そんなもん”訂正しました”なんて誰も知らない話ですよね・・・
”信じる”という事はある種の思い込みです。こうやって情報は偏っていく、という警鐘がありました。歴史的な事象調査に裁判、そして戸惑うリップシュタットの心情とフォーカス部分の多い作品。しかし本作はホロコースト物ではなく裁判物ですので、”どんな風に判断されていくのか”という部分が一番面白みがありました。あとアーヴィングを演じたティモシー・スポールですが、その嫌らしい表情と話し方がとても似合ってました。
コメント も、文句以外で・・・