生き残った秘書の実話・・・本当?
近づいてくる”破滅”の音
1942年の東プロイセン・ラステンブルクで、ナチス・ドイツ総裁アドルフ・ヒトラーの秘書採用試験が行われます。大本営に呼ばれた5人の秘書候補たちはヒトラーに挨拶を行い、簡単なタイピングのテストを受けます。「少し間違えても構わない」と常に優しい口調で、ヒトラーは”ナチスを結成したミュヘン”生まれのトラヴィルを個人秘書として採用しました。
2年後の1945年4月20日、この日ヒトラーは地下基地にて56歳の誕生日を迎えました。しかしドイツはソ連からの攻撃を受けており、とうとう12km近くまで進軍されています。誰からも進言・報告がなかったことに激怒したヒトラーは「役に立たない空軍司令官は全員クビだ!」と言い放ちます。この日からヒトラーの精神とナチスが崩壊が加速していくのでした。
秘書トラヴィル・ユンゲから見たヒトラー
”独裁者””悪のカリスマ”そんなイメージが少し変わってしまう作品。登場始めから秘書たちと会話するヒトラーに恐怖は全く感じず、むしろ良いおじさんとしか見えません。戦争時と平素時で大きく精神状態が違う人物だったようですが、最期の12日間はまともな考えができない程憔悴していきます。
本作は元秘書であるユンゲの証言から作られており、真実に迫る物だと考えられます。秘書官や軍人にも優しい顔を見せるヒトラーの姿に戸惑いますが、ある意味”人間らしさ”を持っていたことが伺えます。しかしこの”人柄”にほだされていたユンゲは「若かったは言い訳。知らなかったでは済まされない。」と話し、ナチズムとは無関係と主張しながらも呵責を背負って生きたうようです。
強要ではなく洗脳
強いカリスマ性に惹かれた人々がヒトラーの死に追従します。”無条件降伏”という選択肢がありながらも、”敗戦は味わいたくない”という想いだけで周囲の人間を巻き込んで破滅へと進んでいきます。本作では強制・強要はしておらず、あくまで”本人の選択”としてヒトラーと共に最後まで戦う事を決意している姿は、平和ボケした僕の目には”異常”に見えました。
敗北を覚悟しながらも「第9隊が後方より援護に周れば勝てる」等の、妄言を言い切るヒトラーは段々哀れに見えていきます。威光放つ天上人に見えても最期は人等しく狼狽、困惑、虚勢と哀しい程墜ちていくシーンがヒトラーっぽくないけどリアルでした。しかし彼の遺した傷跡を見れば、同情の余地なんかないことは明らか。感情が哀れさに引っ張られないように見るべき作品でした。
コメント も、文句以外で・・・