ホアキンに感謝・・・名作!
貧富の差が”何か”を生んだ
貧富の差が激しく暴動と困窮を繰り返し疲労している大都会ゴッサム・シティ。この街でピエロとして働くアーサー・フレックは、貧しいながらもそれなりに母親と生活していました。しかしアーサーは脳神経の損傷から”急に笑う”発作があり悩まされています。そんなアーサーの心の支えはコメディアンになることでした。
この日の仕事はピエロ姿で閉店セールの宣伝。しかし仕事中にいきなり若者に襲われ袋叩きに合います。気の毒に感じた同僚ランドルは拳銃の入った紙袋を渡し「自分の身を守れ」と話します。しかしこの拳銃を仕事先の小児病棟で落としたことで解雇。途方に暮れたアーサーはピエロの姿のまま地下鉄に乗ります。そこで酔ったエリート・サラリーマンに絡まれ衝動的に射殺してしまいました。この事件からピエロは貧困層の英雄と崇められていくのでした。
最下層まで”落ちている”魅力
アーサーは正直で優しい平凡な男です。誰かに危害を加えるような人柄ではなく、むしろ叩かれてしまう人間でした。そんなアーサーに待っている人生は”未来を感じさせない”ものでした。解雇・殺人・裏切り・切り捨て、更に信じていたモノまでも崩れていく時の彼は、誰の目から見ても”不幸”で”哀れ”に映ります。そんな徹底した落下人生が”ジョーカー”という作品には必要でした。
この生まれながらの底辺、アーサーを演じたのはホアキン・フェニックス。奇妙な思考もダンスも、そして体形にも違和感を感じさせる圧巻の畏怖を魅せてくれました。ジョーカーという悪役に感情移入し、そして狂った行動に共感してしまう。社会的悪影響なこの役は、ホアキンの持つ特異性があってこそ輝きを得たことは間違いありません。
カリスマでは収まらない”事象”
ゴッサムで苦しむ人間達が具現化された存在がジョーカーでした。ピエロな彼は”誰にとって面白い出来事なのか”を追求していきます。ジョーカーの行動はゴッサムで生きる貧困層にウケ、そして波及していく事でゴッサムに目で見える現象として姿を形成しました。暴動とも呼ばれるこの現象自体がまさに”ジョーカー”だったのです。
言葉では伝わらない想いを伝える最後の手段、それがジョーカー。そんなメッセージがあるのかな・・・なんて思いながら鑑賞。小さな爆発を起こしている貧困住民達が1人の特異な存在を確認して大爆発する。これはまさに”英雄”の役割です。この作品は”バットマン”スピンオフ作品ではなく、ゴッサム・シティに異変をもたらせたスーパーパワーを持たない貧しい男の英雄譚です。
⇑ ホアキンの”悲しき悪役”は一級品
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