名優の迷演技ですな・・・
手品師の苦悩
カードを使ったマジックが得意な手品師コーキー。腕前は良いのですが喋り下手なため、客受けは皆無という残念な男。思い悩むコーキーは恩師からアドバイスを受け、自分の代わりに話す腹話術人形”ファッツ”を舞台に引き連れることにしました。
腹話術人形のファッツはコーキーとは全くの別人の様にトークが軽快です。軽口な掛け合いが大うけし、TVへの出演依頼がくるほど人気が出ます。しかしコーキーはTV出演前の健康診断を嫌がります。それは本人がファッツの違和感に気付いているからでした。そうしてコーキーは都会から姿を消し、生まれ故郷へ向かうのですが・・・
人形のように多彩に化けるアンソニー・ホプキンス
『羊たちの沈黙』で爆発的に名前が売れたアンソニー・ホプキンス。不穏な空気が良く似合う彼は『ケロッグ博士』や『ヒッチコック』でも落ち着かない存在感を醸し出しています。そんなアンソニーの若かりし頃の作品かあ・・・いや、やっぱり不穏系かい!?
舞台で培った実力と、元からあふれ出ている重厚感。映画の端役でもオーラが違う存在感と、どんな役でもシナリオ通りの人物になりきる演技力。それは本作に出て来る腹話術人形のように本人とは全くの別人格を生み出していました。若い頃から影のある作品に抜擢される理由がよくわかります。
鬱と躁
コーキーが鬱でファッツが躁という真逆コンビ。とはいえファッツは人形で、コーキーの演技のはずです。意思を持ったように見えても独りごとを繰り返しているコーキーに強い不安を感じました。これほどハーモニカの音を怖く感じる作品もありません。
正常ではない精神作品というモノに妙に心惹かれてしまいます。この系は”異常かどうかわからない、しかし何か起きている”という狼狽加減によって評価が変わるのですが、本作はGOODでした。ちょっと生きるのに疲れた時に観ると感情移入ハンパないですよ(お勧めはしてませんからね)。
\サブスク引き籠り応援団です/
コメント も、文句以外で・・・