時代を象徴するような素敵な作品
一目ぼれしたのは・・・
1957年のイギリス。ミセス・ハリスはごく普通の女性。家政婦をしている彼女は、友人ヴィ達とそれなりに楽しく生活しています。ある日ハリスはヴィと共に、英国空軍からの小包を開けます。そこには夫エディーの死を知らせる手紙と、彼からの贈り物”指輪”が入っていました。そんな少し落ち込む彼女に、とある”出会い”がありました。
気が沈んでも働かないワケにはいきません。雇い主であるダント家で今日も奥様に仕えます。しかし給与は未払いで、ただ働きをしている状態でした。そしていつものように片付けを行っていると、”クリスチャン・ディオール”のドレスが置かれているのに気づきます。そしてハリスは一目ぼれし、”クリスチャン・ディオールのドレスを買う”という夢を持ったのでした。
貴族時代とクリスチャン・ディオールの変化
フランス・パリでオートクチュール専門店として名高い超高級ブランド”クリスチャン・ディオール”。芸術感溢れる装飾はフランスの芸術価値を押し上げたといっても過言ではありません。しかし戦後で物資不足のこの時代、”贅沢すぎる”という抗議運動が過熱化していました。更に”売上”にも問題が生じており、生き残れるかの瀬戸際に追い込まれます。
当時の貴族世界は”後払い”で、しかも信用払いという不確かなモノでした。高級ドレスは売れるのですが、いつ支払われるかは顧客次第というものです。そして1940年代の終わりごろ、香水部門を設立しアメリカで生産するという世界展開を開始。そして超高級物~少し高級と商品に幅を持たせた展開を始めます。これは暗に貴族社会の崩壊を見据えての事でした。
本当に素敵な物が好きだから
ミセス・ハリスは猪突猛進タイプ。大金を手に入れパリでファッションショー会場に入ります。お金持ちの”虚栄”のような会場でハリスは唯一、初めて見る美しさに目を輝かせる素敵な少女と化しています。”何かを作る側”から思えば、こんな羨望の目を向けてくれるハリスは最高で最上級のお客様に間違いありません。だからこそディオールの社員達はハリスに惹かれていくのです。
前向きだけではない、お金持ちではない、順風満帆ではない、どこにでもいる普通の女性。彼女が欲しいのは家が建つ程の超高級ドレス。愚かですか?勿体ないですか?とても素敵なことなんです。何物にも代える事ができない宝物。それを見つけたハリスが羨ましく思います。きっとこのラストが”輝いている”という瞬間なのですね。最高品質の一点ものが欲しい、それはオタク文化の鑑でした。
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