ナチス略奪案件は多すぎますね
絵画を取り戻したい
1988年、ロサンゼルスに住むマリア・アルトマンは亡くなった姉ルイーゼの遺品を取りまとめています。そして遺品の事で一つだけ気がかりな事があり、相談相手を探していました。友人のバーバラにその事を相談すると、弁護士をしている息子ランディを紹介してくれます。早速マリアの元に訪れたランディですが、その依頼内容に難しい顔を見せました。
マリアは叔母であるアデーレの肖像画写真をランディに見せました。クリムトが描いたその肖像画はナチによって家の壁から外され、現在ではウィーンのベルベデーレ美術館に飾られていました。つまりマリアは、このアデーレを取り返したいのでした。これはアメリカの女性個人が、オーストリア国保有の絵画を取り戻すという大きな戦いになります。ナチス略奪絵画案件として世界に影響を与える訴訟が始まるのでした。
「黄金のアデーレ」闘争の経緯
アデーレ本人についてマリアは「片頭痛に悩まされており病弱。鬱症でヘビースモーカーだが、顔立は絵画そのままに理知的で洗練されていた」と語っています。クリムトがアデーレを2回モデルにしている事からも外見の評価が高い事が伺えます。この黄金のアデーレですが、何故返還の話になったのでしょうか。
そもそもアデーレ自身はオーストリアに寄付するよう言い残していました。政府も”遺言に従っており合法”と主張しており、当然のように思われます。しかし争点となったのは”絵画の持ち主はアデーレなのか?”でした。夫のフェルナンドは”全て家族に譲渡する”と残された遺言を持っていました。言い残すよりも遺言で残っている方が合法と考えた事から本作のような訴訟が発生したのでした。
ナチス略奪絵画案件の実話
世界大戦開始から終結までの長い間、ナチスによって大量の美術品が略奪されました。現在ではこの”ナチス略奪品”の持ち主の特定と返還をする努力が各国で行われています。しかしその数の多さに持ち主の特定はかなり曖昧なモノとなっており、今回の「黄金のアデーレ」のように”言った言わない”なんて話で裁判に発展しているケースも少なくありません。とくに「黄金のアデーレ」は超がつく高額美術品なので揉めますよね。
実際に起こった裁判が題材の実話ベース。映画としては”時代と共に国も変化する”という成長・変化の物語でした。無駄なシーンがなく洗練されたストーリーは、戦争の傷跡をはっきりと映し出し”同じことを繰り返さないで”という訴えと共に、”過去の過ちは償う事ができる”と雄弁に教えてくれました。まさに混沌の今(2022年)観ておくべき作品です。
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