天才サリンジャーは変わり者
夢は”小説家”
1930年代、ニューヨーク在住のジェローム・ディビッド・サリンジャーは小説家を夢見る高校生です。食品業を営む父は小説家に強く反対しますが、母の強い後押しのおかげで無事コロンビア大学へ入学し、専門的に学べる環境になります。教授のアドバイスをうけながら大手雑誌”ザ・ニューヨーカー”に投稿しますが、不採用の連続。それでも”不採用にどう対応するかも小説家の仕事”と書き続けました。
ある日教授はサリンジャーに”短編小説が文芸誌で発表された”ことを告げ初報酬を手渡します。喜んだサリンジャーは酒で祝うのですが、その席でウーナという女性と出会います。上手くいかない恋愛になりますが、その体験を元に”ホールデンとサリー”という短編を書きます。読んだ教授は大絶賛し「長編にするべきだ。」と勧めます。ウーナとも距離が近づき上手くいき出した1947年12月7日、日本軍による真珠湾攻撃を受け、サリンジャーは徴兵され戦場へ駆り出される事となりました。
サリンジャーはかなり変わった人物
”ホールデンとサリー”は後に”ライムギ畑でつかまえて”の題名に変わります。現代でも売れ続けている超ロングセラーとなったこの作品、主人公ホールデンはサリンジャー自身を描いています。発表当時は”主人公が狂ってる”とか”心理状態がわからない”といった批判が多くありました。しかし”若者”からは評価が高く、実際に読んでみると”若い頃だけの心理”をありのままに表現している事がわかります。
小説家として大成功を収めたサリンジャーですが、有名になり対人関係に嫌気が刺してしまいます。そして田舎に移り電気・水のない原始的な暮らしを始め、更には2mにも及ぶ高い塀を作って周囲との関係を断ちます。そして映画ではわかりにくいのですが、一度小説を書き始めると飲食・睡眠・排泄も後回しにして引き籠るという”過集中”の状態になっていたとか。生きづらい人生だったようです・・・
年を取ると見えなく・感じなくなるモノがある
自分でもわからない苛立ち・葛藤・・・ありました。周囲から見ると”何してるんだ?”と思われる行動・・・しました。読んだ当時は理解できましたが、最近読み直してみると”この主人公いかれてる”と読んだ時の年齢で感想が変わります。それは加齢なんです。恋にすがり自分に酔って、不幸を嘆きながら幸福を自慢する。いつの時代も血気盛んな時期ってそういうものなんです。
サリンジャーは”芸術家は作品に没頭すべし”を体現しています。実に映画・ドラマ向けな人生を送っています。対人関係では苦労したようですが、”これで生きて行くんだ!”というモノに出会た事は羨ましく思えます。そして”生活のためではなく、執筆の為に生きる”という高潔な生き方をしています。本作ではそんなサリンジャーという名の文学が垣間見える作品に仕上がっていました。また読み直そうかな・・・
⇑ こういう”若者の気持ち”は年とるとわからなくなる・・・
⇑ ”これで生きて行く”に出会えたのは幸せです(漫画)
コメント も、文句以外で・・・