思惑重い作品で好みです
仮想空間なら歌える
高知県の田舎町、女子高生内藤鈴(すず)は父と2人暮らしです。母親は幼い頃に川で女の子を助け、そして命を落とします。すずは母親の死に合わせて「他人を助けるために川に飛びこむとか、正義ぶってる」というSNSで流れた心無い書き込みに深く傷ついてしまいます。さらに母親の影響で大好きだった歌も、人前で歌えなくなりました。
そんなすずはインターネット上の巨大仮想空間<U>にアクセスします。そして自身のアバターベルになると歌うことができました。友人の力を借り、瞬く間にフォロワー2億になり大規模ライブまで開催するようになります。ライブ当日、突如竜と呼ばれるモンスター型アバターが戦闘しながら乱入しライブは中止となります。背中に痣をもち、猛り狂うように戦う竜が気になるベルは彼を探し始めるのでした。
姿を見せない悪意と本音
SNS上では正体や姿を隠すことができます。それは時に人を傷つけることを想像できなくしてしまいます。なんだか相手のことをAIのように感じる部分もあり、現実と壁ができてしまうのです。普段なら何とも思わないことでさえ、自身の正体がバレない事から気が大きくなり「他の人も叩いてるし」と軽い気持ちで書き込むこともあるでしょう。すずはSNSの被害者の一人です。
他人の意見に釣られやすくなるのがSNSですが、実際の本音はそこまで卑屈ではないはず。本来は仮面をつけることで普段と違う自分を楽しむ場所です。一部例外もあるでしょうが「争うため」にSNSを利用する方は少ないはずです。この作品はこの「本音」の部分にキモがありました。何度も悪意に包まれながらもベルは自分を変えるため、そして見知らぬ竜に何かを感じ歌っているのです。
SNSから助けての声が聞こえる
ベルは本能的に何かに気づきます。竜の異常な程執拗に敵を叩きのめす姿に何かを感じていました。周囲からは「戦闘スタイルがやばい」「危険なやつ」と叩かれており、竜の行動が悲鳴だと気づくことはできません。億を超えるアバターの中から竜の悲鳴に気づいたのは、やはりすず自身も<U>の世界でしか歌うことができないからでした。
かなり重いSNS案件で、ちょっと想像と違ってました。いや、かなりですね。とても残念ながら、この重さが好きでして、、、すずの挙動やテンパリ具合は陰キャ同志として理解できます。僕もこういう空間なら美声を轟かす自信がありますよ!!でも、それは仮面をつけた自分のような自分でないような存在であればです。この言葉に感動しました、そして知って欲しい「あなたは素敵。あなたは綺麗。」
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