取り返せない過去が辛い・・・
絶望した人生と小さな光
建築現場の作業を終え帰路についたジャック・カニンガム。車に乗り込むなりボックスに常備しているアルコール缶を開け、次々に飲み干していきます。帰宅してからも常にアルコールが手にあります。そのせいで感情が昂りやすくなっているジャックは、妹に会ってもアルコール依存の話が始まると怒り猛る始末。そんなジャックに母校から連絡が来ました。
ジャックは学生時代、カトリック系の高校に通っておりバスケットボールでプロも期待されていた選手でした。しかしプロには進まずバスケットボール自体から離れています。そんなジャックに来た相談とは、高校バスケ部のコーチの依頼でした。「できるわけない」と悩みながらも、とりあえず様子を見にいきます。すっかり弱小チームになったバスケ部に飽きれながらも依頼を受ける事に。そして気が付けばアルコール缶から手が離れていました。”この生活が続きアルコールに頼らなくて良くなる”、そんな希望が見えた矢先に・・・
アルコール依存症は抜け出せない
ジャックは完全なアルコール依存でした。本作では”熱中する何か”が見つかったおかげで離れていますが、それは治癒ではなくあくまで”回復”でした。一切断っている時期は平気なのですが、1缶どころか1口で再発するという恐ろしい病気により、彼の体と人生は脆く崩れています。家族にとっても辛い病気です。
病気になる要因はほぼストレスということで、治療方法はカウンセリングが主。ジャックのように「自分は大丈夫」と考えている人には「あなたは依存症」と認識させる事からスタートされます。合併症があれば入院でしょうが、そうでなければ自宅で断酒(減らすではなく断つです)が必要で、当然過酷なモノになります。酒に吞まれてはいけませんよ・・・認知症(こんな感じ)の元にもなりますから・・・
ザ・ウェイバック(吹替版)
酒しか残らないのか、それとも何か残ったのか
バスケに熱中するシーンから”アルコールからの脱却”をイメージしますが、そういう作品ではありません。再生を目指しているジャックですが、バスケだけでは補えない過去を持つ彼には一時の希望にしかなりません。依存症を根本から取り去るためには、未来への希望よりも過去からの解放が必要でした。何を失い、何を得、そしてどこへ向かうのか。最後まで気が抜けない、希望と絶望を繰り返しています。
ジャック役のベン・アフレックの演技が眩しい作品でした。ベンの切れ方がとてもリアルで、アルコール依存症が似合って(褒めてる)いました。ジャックはカッコイイ役ではなく、どちらかというと”どうしようもないボンクラ”という印象。最後までその印象は変わりませんが、”なんとなくジャックは立ち治っていくのかな?”と思わせるラストは好みです。スポ根ではなくヒューマンドラマとして、深みのある作品でした。
コメント も、文句以外で・・・