
年を取っても変わらないのが良い
野放しにできない人物がいる大学
成南電気工学大学では「危険制御研究部」という物騒な名前の部が存在しています。この部は現在黄金期を迎えますが、他部からは「キケン部」と呼ばれ恐れられています。原因は部長上野。「成南のユナ・ボマー」と謳われる無類の火薬好き。小学生時代に既に自宅にて爆発物を作成しており、爆破実験も喜々として行と野放しにしてはいけない人物です。
副部長である大神によって統制・制御されているキケン部も、現在は新規部員を求めて活動中です。2人は巧みな話術で新入生の勧誘に挑み、元山・池谷という2人の部員を引き入れる事に成功します。この元山・池谷は「常識」ちゃんとわきまえているのですが、否応なく非常識なキケンと付き合っていくことが決定した瞬間です。
バカなんだ アホなんだ 青春なんだ
この作品は新入生である元山が大人になり、妻に話すシーンから始まります。母校である成南大学の学園祭に赴くことで色々と思い出し、遠い目をしながら笑みを浮かべて・・・そんな風景が目に浮かびます。振り返りは美しく良い思い出でしょうが、その当時は相当ハチャメチャ(火薬搭載ロボットで相撲大会参加みたいな)しています。
上野という危険指定生徒のおかげで、何をするにも大騒ぎになっていたキケン部時代。特に今回訪れたのは学園祭のタイミング。参加した当時、通常ではあり得ない想像を絶する無茶が詰め込まれた部活動がありました。大人になった元山は上野・大神がいない学園祭を楽しみに、そしてなんだか不安に感じて参加しています。
![]() | 価格:1,540円 |

こんな友情、泣くに決まってる
大人になった元山の語りは、激しくも楽しかった過去を懐かしんでいます。滅茶苦茶な先輩のおかげ(せい)で退屈する暇がなかったのも昔話になり、もう出来ない・しないものと感じています。そんな感情を受けると読み手の僕自身も「昔は色々してたな」という思いに老け込んでしまいました。
しかし有川作品は「良かった時代の回顧録」では終わりません。過去に起こったできごとは無くなることはなく、ちゃんと今に繋がっていました。上野・大神のいない学園祭で感じた「不安」はきっと寂しさから。しかしこのキケン部は生涯寂しさとは無縁なようです。読み終わりには号泣。読み返して号泣。今では表紙で泣けます。
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