フランスらしい美術作品
一輪の赤いバラ
ある女性が子供達に”フランス民話”を聞かせています。それは”美女と野獣”というお話。
裕福な商人の船が沈没し、破産してしまいます。全てを失い街を出て田舎で暮らしていた一家ですが、そんな折1隻の船が無事だったと朗報が入ります。しかし破産の身であり、積み荷は全て没収。ドレスや宝石をねだっていた子供達に合わせる顔がなく、商人は吹雪の中家路につきます。しかし途中馬の脚が折れ、商人は足元を見失い崖の下へと落ちてしまいました。
気付くと目の前には暗闇の城の姿が。主人の姿が見えないのですが、テーブルに並べられた食事を頂きます。そして部屋に置かれているドレスや宝石といった子供達のお土産も手に取ってしまいます。そして帰ろうとしたとき、外の”赤いバラ”に目が止まります。最愛の娘ベルが欲しがっていた”一輪の赤いバラ”。そう思ってちぎり取ると「恩知らずが!!!」と唸る野獣の姿が。「一番大切な物まで奪うのか!!」と覆いかぶさり、そして代償に商人の命を要求します。しかしその話を聞いて野獣の元に赴いて来たのは、赤いバラをねだったベルでした。
「続きは明日にしましょうか」しかし子供達は「嫌だ、続き続き!!」。そして物語が続きます。
圧巻だった”バラの城”
寂れた古城ですが、中は美しく気品あふれる内装でした。料理すら飾りに見せるという”美しさ”にこだわったフランスらしい作品。ベルが城内で着るように構えられたドレスは刺繍細やかなイヴニング系と、すでに”お姫様”な状態になっていました。青く光る泉に赤を基調とした家財など、どれも丁寧に作り込まれた物ばかりでしたが特に綺麗なのが”城そのもの”でした。
赤いバラ・白いバラ・混合色のバラと、色とりどりのバラが城の庭に壁にツタを伸ばしています。薄暗い城にバラ、という組み合わせは怖さと美しさを両立させています。この美しく咲き誇る守られるバラの存在と。大切な物を守る為の見た目恐ろしい城の関係も”美女と野獣”でした。
愛されたいという我が儘を生々しく
野獣は傲慢で粗暴なそぶりをしますが、乱暴ではありません。惚れた弱みというやつで、結局ベルの言う事を聞いてしまう辺りにツンデレが見えます。人間から遠ざかっていた野獣は、自分が思っている以上に自信がなく孤独を感じていました。だからこそ天使のようなベルを思いすがったのです。
脅迫して怖がらせて、でも手が出せないという野獣が理解できてしまうのがなんだか哀しい。これでは中々惚れてもらえないよな・・・と思いながらの鑑賞でした。しかしモテ男は台詞が違う。「お前が戻らなければ、俺が死ぬ」という殺し文句。ベルも少し心を開いた瞬間だったので突き刺さりました。こんなスキルがあれば野獣でもOKか・・・。原作フランスということもあり、世界観バッチリな美女と野獣。レア・セドゥの白き美しさはエルフのようでした。
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