隣人は怖いもの
引っ越してきた元被告人
武内真伍は引越しを終え手作りバウムクーヘンや、各地の名産品を持って隣の梶間家に挨拶に行きます。この梶間家の家長である勲は元裁判官で、過去の事件でこの武内に無罪判決を下した人物でした。梶間家に嫁いだ勲の義娘である雪見は「理解してくださって感謝しています。」と打ち明けてくるこの武内という男に、なんとなく薄気味悪さを感じていました。
武内は恩返しといわんばかりに梶間家で介護の手伝いをし、雪見の夫敏郎の就職活動を手伝うなど、梶間家と懇意に接しています。そんな折雪見の元に記者を名乗る人物が「武内は危険だ」と伝えるために接触してきます。元々武内に不気味さを感じていた雪見はその話を半信半疑ながらも聞き入れます。そして記者というのは偽りで、武内の事件で被害者遺族となった池本亨である事がわかり、過去の事件と現状が酷似していることを知った雪見は池本に協力していくのでした。
バウムクーヘンが美味しそうなのに怖い
この作品で眼を引くのが「手作りバウムクーヘン」。武内が自宅で作るこのバウムクーヘンは、こんがり美味しそうでありながらも不気味な食べ物に見えてしまいます。生地を焼き棒に塗っては「おいしくな~れ、おいしくな~れ」と話しかけ、火の粉が降る中笑顔で一心不乱に焼き上げていく武内の姿はまさに狂人(普通に作っているだけですが)でした。
この作品を見て「家庭で作れるのか」と関心は持ちましたが、答えを言うと無理です。生地が大量に必要で焼き機設置にはそれなりの面積が必要。更に焼いては塗り、焼いては塗りを繰り返すのは見ていても苦行です。武内にとっては「幸せの象徴」だったバウムクーヘンですが、この手作りをするという発想が既に常人ではなかったようです。
武内の異常性に引き込まれる
武内役はユースケ・サンタマリアですが、この不気味さは見事。まさに怪演としか言い様がありません。じりじりと梶間家に取り入り、いつの間にか「家族同然」に仲良くなっていく様子にゾクゾクが止まりません。確かに何もしていない(序盤)のですが、間違いなく危険な隣人であることが伝わります。この眼の奥の鈍さはユースケ特有です。
丁寧に焼き上げるバウムクーヘンを見ていると、「ドラマ版 ハンニバル」が連想されます。変な肉とかは入ってないのですが、「食べ物が不気味な物」に見えるという意味で共通しています。「洗脳犯罪」というジャンルになるのでしょうか。こういう作品は「何かが近づいてくる」というジリジリとした恐怖感がたまりません。2016年の東海TV放送ドラマですが、もっと話題になっても良いミステリー作品でした。
↑ 「アルジャーノンに花束を」もユースケ会心の演技。不気味な演技は超一流でした。
コメント も、文句以外で・・・