変えたのは2人の子供
偏屈と変化
筋金入りの頑固で偏屈な老人ウォルト・コワルスキーは戦争の影響でPTSDを患っています。また大手自動車会社フォード社に勤め大の愛国者であり、最近人気の日本車とアジア系の人間が大嫌いです。そんなウォルトのガレージには”72年型グラン・トリノ”が置かれています。コブラジェットエンジン搭載のヴィンテージカーで、ウォルトの唯一の宝物でした。
ある日、彼の隣にモン族の一家が引っ越してきます。息子タオは従妹の仲間に入る為、隣人ウォルトのグラン・トリノを盗もうとします。しかし見つかってしまった上に、ライフルを構えられ逃げ去ります。さらにタオの姉スーは不良に襲われそうになり、そこをウォルトに救い出されます。スーはお礼にと強引にウォルトを自宅に招きます。アジア系のモン族に囲まれ戸惑うウォルトですが、モン族の温かい歓迎に心が緩みます。更に翌日、車を盗もうとしたお詫びにとタオが仕事の手伝いを始めるのでした。
スーとタオの影響
娘のスーはウォルトを強引にホームパーティーに誘います。お礼という名目ですが隣に住んでいるので、ウォルトの家には1匹の犬がいるだけで、訪ねて来なる人がいない事に気付いていたのです。少女ながら”おせっかい”な彼女はウォルトの心に変化をもたらせます。
息子のタオは引っ込み思案で、ギャングである従兄に色々な悪時に利用されます。ウォルトは喝を入れながらも先輩として人生を教え、友人として口説き方も教えます。しかし実は教えられ、助けられていたのはウォルトの方でした。そしてこの姉弟に大きな事件が起こった時、ウォルトはこの2人に”恩返し”をするのです。
栄光のアメリカを忘れられない
ウォルトにとってグラン・トリノは自動車産業で栄えたアメリカの象徴です。そしてアジア圏での戦争に従事した為、アジア人に偏見を持っています。しかし周りを見渡すと日本車が市場を占め、移民もアジア系が増えていました。時代に取り残された”頑固じじい”はグラン・トリノ同様、単なる飾りに見えました。しかし手入れを怠っていなければ、古くても走る。そんなウォルト=グラン・トリノの構図が見事な作品でした。
クリント・イーストウッド監督兼主演の”グラン・トリノ”は、”監督業に専念するつもりだったがこの役に惹かれた”と話し主演しました。2008年の発表当時78歳のクリントは、まさに退役軍人で高齢者役に丁度の年齢。そして演技・雰囲気は超一流とあれば当然ともいえる兼主演です。恐らくクリントは本当の自分も重ねてウォルトを演じたのでしょう。気合が入った本作は爽やかな涙で締めくくられますよ。
コメント も、文句以外で・・・