鬱映画でした
超えてはいけない国境
北朝鮮で漁師をしているナム・チョルは、貧しいながらも妻ウヌと娘の3人で笑顔の絶えない生活を送っていました。とても寒く霧が濃い朝、国境警備隊から「国境は超えるなよ。」と忠告を受けます。「慣れてますから。」と湖にでますが魚網がエンジンに絡み故障。そして潮に流されていきます。
流れ着いたのは向かい岸である韓国。チョルは拘束され案の定スパイ容疑をかけられます。家族の元に帰りたい、家族に迷惑をかけたくないという一心のチョルですが、取調官はスパイに仕立て上げようと必死。監視官はスパイではない、と判断していますが取り調べには口出しできません。厳しい拷問の中チョルは、「帰りたいだけだ!」と一貫して訴え続けます。
現在でも”休戦中”な南北
1950年の朝鮮戦争ですが、現在でも膠着しているだけで続いています。特に北朝鮮は韓国を”統一対象”ではなく”敵対国”と見なしており、その緊張状態は増しているのが現状。自由と民主主義を目指す韓国と、独裁的で軍事主義を貫く両者は相いれない関係となっています。しかもこの2国が近隣、というより同じ朝鮮半島内という事が本作をリアルに見せていました。
軍事境界線と呼ばれる際で生活するチョル。家族と相睦ましい姿を見せており、そこには普通の幸せな家庭がありました。しかし韓国に着いた時からの狼狽は尋常ではありません。北朝鮮に帰りたい、韓国はお金はあるが裕福ではない、と感じながらも北朝鮮に対して絶対的な恐怖を感じていました。
あそこは”異常な国”に違いない
チョルの視点から描かれる本作では、温かい家庭のある北朝鮮は絶対悪ではありません。むしろ裕福な韓国の方に”闇”を感じていました。しかしこれはあくまで”個人的な視点”。北朝鮮・韓国という国から見降ろしてみると韓国からはスパイ、北朝鮮からは脱北疑いと韓国に取り込まれた恐れがある人物となります。これは2ヶ国間の関係性が悪いからこそ起こった悲劇なのです。
両国ともに隣は悪い国と教育してきた設定(あくまで映画の設定ですよ・・・多分)の本作。拷問を受けている時は”なんて国だ・・・”と見えますが、自国に帰れば元の生活に戻れるのでしょうか?それはチョル自身も不安を感じている事でした。近隣国家間での争いは民の生活にも大きな影響を与えます。本作は後味の悪さと共に、現実的な問題をぶつけてくる良作。ただし鬱系なのでテンションはだだ下がりですよ!!!
コメント も、文句以外で・・・