東ドイツの監視社会
1984年の東ドイツは、国家保安省ことシュタージによって監視・尋問が当然の社会となっていました。特に組織内でも優秀なゲルト・ヴィースラーは上司グルヴィッツに人気劇作家ドライマンの舞台に招待されます。そしてドライマンの劇を観たヴィースラーは「監視するべきだね。」と話しました。
別日グルヴィッツは党の有力者の依頼を受け、ドライマンの監視をヴィースラーに命じます。部屋に盗聴器を仕掛けると、ドライマンは演劇女優クリスタと同棲しており情事に関しても細部に記録していく事となります。ある日ドライマンはピアノソナタを弾きながら「このソナタを聴くと善人になっていますんだ」とクリスタに語ります。そして曲を耳にしたヴィースラーは何かが変わり始めるのでした。
ベルリンの壁
1961年に東ドイツ政府が東西の境界線に壁を建設しました。これは東側が西側への人民流出を止める事が目的です。最初は有刺鉄線だったのですが、最終的にコンクリで囲ってしまったので”壁”となりました。東ドイツはソ連を模した強固な社会主義で、その監視・管理体制は市民を苦しめます。
崩壊の日は突然訪れ、1989年11月9日の夕方に東ドイツは市民の大量出国を止める為、西側への旅行規制緩和を提案。そして「ベルリンの壁を含むすべての国境検問所から出国を認める」と声明し、外国人記者の質問に対して「今すぐ、即刻です」と発言したことで東側市民が壁に集まり壁を崩しました。本作はそんなベルリンの壁崩壊の前日譚となります。
ヴィースラーの生き方が変わる
ソナタをきっかけに変化が起きますが、そもそもドライマンの作品や思考・生活にヴィースラーは影響を受けます。社会問題に対して清廉なドライマンの活動は、社会主義に対して疑問と警鐘を感じさせていたのです。そうして強固な壁の中で生きてきたヴィースラーは、少しずつ今までと違う考えをもち自分の壁を壊していきます。
魅力はヴィースラー役ウルリッヒ・ミューエの心理変化時の演技。国の為に命をかけている男が、ある日少年から話しかけられます。明らかに反社会主義な父親の話を聞きますが、不器用に見逃しました。小さな嘘が大きな変化の合図となっています。盗聴・監視によって本当の自分を見つめ直すという皮肉。ベルリンの壁崩壊とは、こういった出来事を積み重ねて起きた”市民の勝利”を意味する出来事だと教えられました。
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