辞典の編纂に熱いドラマが・・・
殺人犯と編纂集
アメリカ人元軍事医大尉のウィリアム・チェスター・マイナーは南北戦争の体験から、日々幻覚に悩まされています。その強い幻覚が原因で見間違いをし、一般の人を射殺してしまいます。ロンドン裁判所で「心の病のため無罪」となりましたが、ブロードムーア刑事犯精神病院に拘禁されることになります。
丁度同じころ、オックスフォードでは英和辞典の編纂責任者としてジェームズ・マレーが選任されます。学士号を持たないマレーが選ばれた理由は、この20年間英和辞典を出版する事ができず低迷していた背景がありました。型破りな発想で編纂する事を期待されたマレーですが、そこには大きな壁が経ちはだかります。そんな折、マレーの元に殺人犯マイナーから一通の手紙が届きます。この出会いが英和辞典と2人の人生に大きな変革を起こすのでした。
オックスフォード英和辞典
1850年代に既存の英語辞書が不完全・不十分であると判断されています。その事を重く見たロンドン言語協会は「完全な辞書」編纂を目指す巨大プロジェクトを発足させました。新しく作る辞書には現在までの言語全てを含め、6,400ページを計画していましたが、その膨大な量と時代によって変化する言語に対応する事が大きな課題点となります。
10年程度での完了予定でしたが、5年経過した地点で最初のイニシャルAすら完了できず、途方もないプロジェクトの規模であったと発覚。さらに時間が経過すればするほど新しい言語が生まれてしまいます。今現在でも年間数千以上の言葉が追加されています。現代では電子辞書にオンライン化と、辞書の存在自体もその様式を大きく変化させる事で対応しています。
当時で振り返ると”資格なし”はあり得ない
編纂開始当時は博士号などの資格の有無で立場が決められていました。無資格のマレーが抜擢された事は賛否両論、ではなく否定派が多かったはずです。そういう”通常あり得ない”判断をした背景を考えると辞書業界が相当に追い込まれていたことが伝わってきます。そんな中で起きた、このドラマチックな展開は映画にぴったりの題材です。
片や無資格ながらも博士、片や殺人犯で刑務所の病院で拘禁されている殺人犯。この時代に出会うはずのない2人が”手紙”を通じて交流し、そして世界を代表する英和辞典に大きな影響と発展を与えたという”実話に基づいた”物語。静かで暗いトーンの作品ですが、胸に熱く、心が震えるシーンが多いヒューマン映画でした。
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