ホロコースト系は切ない
右足の切断と老人ホーム
アルゼンチン在住の高齢ユダヤ人、ブルスティン・アブラハムは孫たちと記念撮影中。しかしブルスティンの表情には陰りがあり、娘達も浮かない表情をしています。それもそのはずこの記念撮影は”老人ホーム”に入る前の、最後の自宅での写真撮影だったのです。更に昔の古傷がたたった不自由な右足の切断も迫られているのでした。
納得した表情を見せるブルスティンですが、娘たちを帰すと荷物をまとめ始めます。そして向かった先は”チケット売り場”。生まれ育ったが嫌な思い出の多い故郷へ向かう事を決意しています。自身が仕立て上げた”青いスーツ”を片手に、ブルステインは大親友で幼馴染との約束を果たすため、口に出すことさえ憚る祖国”ポーランド”へ向かうのでした。
1940年代のポーランドは危険地帯
1939年に始まった第2次世界大戦。ドイツ軍はポーランドに侵攻し、わずか1カ月足らずで壊滅させます。ポーランドは降伏し、首都を含む半分はドイツの占領下になります。イギリス・フランスがドイツに宣戦布告をしますがポーランドを助ける軍事行動は起こさず、さらに東側もソ連の侵攻を受ける戦争地帯となりました。
このドイツ支配が続く西側で反ドイツ運動が起こります。2か月に及び戦いにまで発展しますが、結果はドイツ軍によって鎮圧。市民の犠牲は15万人に及ぶ大殺戮になりました。本作はこのホロコースト時代の、ドイツナチによる”ユダヤ人絶滅政策”を生き伸びた男を題材にした物語でした。
足を引きずってでも直接渡したい”モノ”
遠い昔の約束”仕立てたスーツを渡す”ために旅に出たブルスティン。苦難の時代を振り返り、本当に行きたいのかどうか悩みながらポーランドへ向かいます。鬼気迫る想いで友の元へ向かう彼には”スーツ”ではなく、他に渡したいモノがありました。”交わす”と表現した方が良いモノで、当事者2人にしか理解できないモノですが、人生の終末に残してはいけない大切なモノが確かにそこにありました。
可愛げのないお爺ちゃんを通りすがりの人が助けていく展開がハートフル。しかも一番積極的に関わってきたのが”ドイツ人”です。ポーランドで奪っていったドイツ人に対して強い態度を取るブルスティンですが、その相手は歴史を知ってはいますが当時産まれていない若人。世代交代を通じて”許して”いくブルステインに胸が熱くなりました。ブルスティンが家へ帰れたのかどうかは、そして彼の求めた”家”とは・・・この作品を観ると”たまには実家に帰らなきゃ”なんて考えてしまいますよ。
⇑ 思い出のままにしない、やり残さない人生を
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