貧困労働者、”庶民”が主役
一体何が起こったのか!?
この日ピゴワルは、殺人犯として刑事から事情聴取を受けていました。「長くなりますが」と前置きし、そして話し始めたのは悲哀に満ちた物語・・・
フォブールにあるシャンソニア劇場で幕引き係を行っているのはピゴワル。年末公開では妻ヴィヴィアンが司会を務め、自称モノマネ王子のジャッキーが紹介され幕開けします。その裏では照明係のミルーが給与未払いを理由にストを促し、劇場支配人の元には借金の取り立てにギャラピアが来ていました。そして劇場支配人は借金を苦に自ら命を絶ちます。
それから4か月後、労働者の改革によって劇的に社会が変化します。しかしシャンソニア劇場は売りに出されたまま。ピゴワルは停職にも付けず、ヴィヴィアンも息子も元を去っていました。気落ちしたままのある日、シャンソニアに侵入したのはジャッキー。それを見たピゴワル・ミルーはギャラピアに建物の賃貸を依頼します。そして、お試し期間を設けシャンソニア劇場再建へと乗り出した3人組でした。
Funlogy ポータブルスピーカー劇場は庶民の楽しみ
劇場ではモノマネ王子の他にも色々と催しが準備されています。その中でも本作が注力したのは”ミュージカル”でした。とある事情で劇場にやってきた女性歌手ドゥース。演じたのは実際にフランス歌手であるノラ・アルネゼデール。透き通る声が劇場に響きます。
しかし本作のミュージカルにおける魅力は歌詞にありました。パリの愛おしさを歌ったかと思えば、皮肉に満ちた歌もコミカルに登場。1930年代の混迷期を歌に乗せて訴えています。作品が130万人動員を記録したというのは、やはり身近に感じる問題が織り込まれていたのが大きな理由でしょう。
そこには確かに”夢”があった
ピゴワルは絶望の淵でした。妻は浮気して金持ちと結婚。自分は仕事を失い最愛の息子は妻が親権を持ちます。そんな折に劇場の支配人になり、ドゥースという期待を手にします。廃劇場の再建物語としては観る側としてはワクワクしかありません。歌詞も後半になるに連れアガっていきました。
浮上していくピゴワルですが、冒頭でわかるように殺人犯となっています。何があったのかが気になりますが、これは誰かが悪い物語ではなく”時代だった”と訴える物語。当時のフランスは市場破綻・食糧不足・過激主義の台頭と庶民には不安しかない時代。現実逃避にもなる娯楽が求められていたのです。そんな時代に懸命で賢明に生きた人たちへの賛歌となる作品でした。
⇑ 時代に翻弄されても一生懸命に
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