親の魅力ってどこだろう・・・
その日暮らし
1989年のニューヨーク。ジャネットは婚約者のデヴィッドと幸せな日々を送っています。ある日、デヴィッドの顧客との会話を弾ませた後、帰宅するタクシーの窓から父親レックスの姿を見つけます。路上でゴミを漁るその姿に、つい目を逸らしながらも幼い頃の記憶が蘇ります。
ジャネットが7歳のころ、両親・姉・妹の5人家族は住む家がありません。車中泊や空き家に忍び込み、お腹が空いても食べる物がありません。学校にも行っていないため児童虐待を疑われては逃げる生活。その日暮らしを強いられる中、子供達はレックスの「ガラスでいっぱいのお城みたいな家を建ててやる」という言葉を期待していました。しかしその望みは叶わず、ジャネットは両親と絶縁し現在に至ります。そしてある日、レックスの命が残り短い事を聞きつけ・・・
乱暴で粗暴でちょっとだけ素敵な父親
レックスは社会を敵視し、アルコール中毒。子供を学校に行かせず入院が必要となった子供も連れ帰ります。自分の考えだけを押し付けており、母親のローズもそんなレックスに賛同していました。2人は喧嘩が絶えない夫婦ですが離れる事はなく、子供達にも社会に馴染んでしまわないように生活しているトンデモ親です。
しかしレックスにはちょっとだけ魅力がありました。”良い時”のレックスはロマンチストで、子供達に対しても良い人間です。しかし子供達が成長すると”嘘・口だけ”と納得しなくなります。成長する子供と変わらぬ父が少しずつずれていくのです。しかし素敵な時を知っているだけに、妙に拒絶しきれない不思議な感情がウニウニと胸を打ちました。
良いとこも悪いとこも
家族、特に両親に対して思うのですが、良い時・悪い時を両極端に感じてしまいます。本作のジャネットも同様で、関わる時期で変化していく両親への心境の動きがリアル。実話ベースなので説得力があり、誰にでもある出来事や思いがテーマに感情移入させられました。
僕は飲み会に行く父親が嫌いで、母から「飲み会で遅いらしい」と聞くと自分の部屋に籠っていました。しかし近所のお好み焼き屋に行く時は父親が良かった、そんなことも覚えています。そんな父も今やパーキンソン病。記憶とは大分変わっている姿を見ると、良かった時の思い出が強くなります。ちょっとセンチメンタルになってしまう、そんな作品でした。自分に良い過ぎてチョイ泣きしてしまったのが無念。
コメント も、文句以外で・・・