小説を読んだ気分になれる・・・鬱だよ
心優しい男に起きた異常
1900年代のプラハに暮らすザムザ一家。長男グレゴールは両親に妹、そしてメイドと暮らしています。父の商会が潰れてからはグレゴールが唯一の働き手となり、仕事に強い不満を持ちながらも家族の為に休むことなく働いていました。特にヴァイオリン好きな妹グレーテを音楽学校に行かせてやりたいと考えています。そんなグレゴールはいつものように仕事で披露し、深い眠りにつきました。
寝苦しい悪夢を見てしまい目覚めると、いつもと観る景色が違っていました。違和感があり動くこともままなりません。必死で体を動かし鏡を見ると、そこには巨大な蟲の姿が・・・。グレゴールは突然蟲になってしまったのです。そこに会社の支配人が出勤の催促にやってきます。言葉も話せない、指もないグレゴールはやっとの事で自室のドアを開けます。そしてその姿を見た両親と支配人は恐怖に言葉を失うのでした。
胸糞・鬱文学
この「変身」という作品自体がかなりの鬱系です。そのため原作忠実な本映画は、観る者も言葉を失う程辛いストーリーが再現されていました(褒めています)。何故”蟲”になったのか、という部分には触れません。この作品はミステリではなくヒューマン・比喩文学といった角度から観る・読むものです。
グレゴールは家族の為に働きづめの生活をしています。劣悪な環境の会社でも逃れられない現状に辟易していました。こんな時、人は”自分以外の何者かになりたい”と望むモノです。そんな思いが募って”変身”した結果は望んだ方向とは違っていました。
蟲になることとは
変身した姿は”ハエ”のような姿。超巨大なその蟲の姿に、今まで支えてもらった家族も掌を返していきます。家族のために働いた長男グレゴリーではなく、家に居ついた巨大な蟲として扱われていきます。ある日いきなり蟲になる、周囲からは気持ち悪がられる、本人は諦めて目立たないように引き籠る、全く救いのない展開に観る側の心が挫けます。
蟲になったことに関しては原因や意味はありません。この作品の本質は”不条理”だと捉えています。しかし若干の意味を持たすとしたら、働き者がある日いきなり働くなった比喩というとこでしょうか。仕事に疲れたグレゴールが鬱病となって、動かなくなった状態を”蟲”に表現したと脳内変換してみて観ると余計に鬱でした。考えるほど鬱になるので、すんなり”蟲になったんだあ・・・”と現実?を受け入れて鑑賞がお勧めです。
⇑ 自分以外になりたかった
⇑ 超不条理漫画の金字塔
コメント も、文句以外で・・・