最後まで腹の下にのしかかる重さ・・・
幼児に好かれ過ぎた幼稚園教諭
デンマークで幼稚園教諭として勤めているルーカス。今までに失業・離婚といった苦難を乗り越え、現在は猟友会の仲間と愛犬に囲まれた穏やかな生活を送っています。穏やかで紳士的、そして子供に優しいルーカスは幼稚園でも好評でした。特に親友の娘であるクララからは強い好意を持たれていました。ある日クララはルーカスの口にキスをしました。ルーカスは「口にしてはいけないよ」とクララに伝えました。
その夕刻、母の迎えが遅くなったクララは幼稚園に残っています。園長グレテが声を掛けるとクララは「ルーカスが大嫌い」と話します。理由を聞くとルーカスの事ではなく、「あそこがピンと立ってるの」「ハートの贈り物をされたの」と、兄の話や自分がした事をルーカスが無理やりしてきたように話してしまいます。そして後日、家族・職員の会議が行われルーカスは「変態野郎」と罵られることになってしまうのでした。
幼い少女が嘘をつくわけがない
園長を始め父兄全員がクララの言い分を一方的に信じてしまいます。警察介入も行われ、事実確認も行っていますが、基本姿勢が「少女が嘘をつくわけがない」でした。クララ自身も自分が実際に見聞きした内容を話しているので、完全な嘘ではなく信憑性のある話でした。そして親友テオ(父親)さえもルーカスを軽蔑するのです。
事の重大さに気付いたクララは母親に「嘘をついたの、何もなかったのよ」と告げますが、これもまた逆効果。母親からすると性的虐待を忘れようとしている、いわゆる後遺症だと思い込んでしまいました。冤罪の起こる経緯がリアルに表現されており、ルーカスの心情に同調して恐怖を感じてしまうシーンでした。
悪いのは誰・・・?
観ていて考えさせられますが、ルーカスを自分に置き換えると怒り・悔しさが湧き上がります。悪いのはクララと見るのか、周囲の大人たちの反応・聞き取りの問題、それとも警察によって確定された事なのか。全てがルーカスの話を無視したことを見ると、ルーカスの信用が足らなかったのか・・・どちらにしろ憤りしか感じません。
DVDパッケージでは感じ取れませんが、人間の闇をこれでもか!と表している北欧らしい作品。少女の嘘が町と人間を壊していく様子はホラーでした。しかしルーカスは町を離れたりしません。「何もしていないから」です。信念を持って抵抗するルーカスの姿に胸が苦しくなります。僕ならとっくに町から脱出していますね・・・マッツの魅力が詰まった胸糞作品でした。
⇑ 「マッツ・ミケルセン」の真骨頂はこちら「ハンニバル」
コメント も、文句以外で・・・